<5>初めての記憶ある悦楽(★)



「ンあ――! ふ、ぁ」

 ドロドロとした液体にまぶした指を二本突き入れ、いつかの朝のように”コンポタ”が突いた。何度もゆっくりと刺激しては、その後強く刺激する。

「ふァ、ううっ、あ」

 双眸を伏せた天草の睫が揺れた。涙で濡れている。
 しかしそのまま刺激を続け、時に指先を動かした。

「うぁ、あああッ、あ」

 それから感じる場所から少しだけずらし、意地悪く指で突く。

「や、やだァあ、ああッ」
「今、先生を抱いてるのは、誰?」
「あ、ああっ」

 震える体に恐怖を覚えながら、静かに天草が目を開く。

「最初からこうすれば良かったのかな? ちゃんと、僕だって教えてあげれば良かった?」
「ひッ」

 再び感じる場所を刺激され、涙がこぼれる。

「けどね、僕は先生の事が大好きだから、気持ちよくなって欲しかったんだよ。無理はさせたく無かった――ねぇ、教えて、先生。先生の恋人は、誰?」

 少しだけ嘘が混じっていたが、それも最早本音だった。
 天草を手に入れられるのならば、それこそ調教してでも、側に置きたい。
 だが、決して苦しめるような事はしたくないというのは、新しく生まれた、本当の本心だった。

「あ、ああッ、う、あ」
「ちゃんと名前で呼んで」
「ふぁ、あ……四條く、ん、ンああっ!!」

 天草が答えると、指の動きが激しくなった。
 片手では、ゆっくりと、天草の陰茎を撫で上げている。そそり立たされた天草の男根からは、静かに液が零れていた。

「祐助先生」

 今度は逆に、”コンポタ”が天草の耳元で囁いてから、優しく耳朶を噛む。

「ひッ」

 前と後ろ、そして耳への刺激に、体が震えて、訳が分からなくなっていく。

「ねぇ、どうして欲しい?」
「あ、あ、触ってッ」
「何処を?」
「ま、前、ううッ」
「誰に触って欲しいの?」
「うあぁあ、や、やだぁあッ」

 指の動きがじれったくて、腰が跳ねる。敏感な箇所を刺激して欲しくて、涙が出てくる。

「あ、ああっ、う、後ろも、あ、さっきの、とこ」
「ン――だからさ、誰に触って欲しいの?」
「や、あ……し、四條くんッ!!」
「良くできました」

 すると中の最も感じる場所を強く何度も指先で突かれ、擦るように陰茎を扱かれた。

「あ、ああっ、も、もう僕ッ」
「出そう?」
「うあ、ああ」
「イって良いんだよ。気持ち良かったら」
「ううッ」
「出しても誰も、もう酷い事しないから――……まぁ、これまで酷い事してたの、僕なんだけどさ……もう、しないから」

 すると堪えるように頬を染め、涙で潤んだ瞳で天草が、”コンポタ”を見上げた。

「本当?」
「うん、大丈夫。だから」

 頷いてから、更に前を扱く手を早めると、喉をのけぞらせて、天草は精を放った。
 それを指で絡め取り、”コンポタ”が舐める。
 その姿を見て羞恥にかられ、天草はギュと目を伏せ俯いた。

「中もそろそろほぐれてきたね」

 弛緩した体で、天草はそんな言葉を聞いていた。

「イれても、良い?」

 聞かれたのなど初めてで、瞼を開きながら、静かに天草は頷いた。

「怖くない? 大丈夫?」

 気遣うように、”コンポタ”が言う。
 慌てて天草は頷いた。何故なのか――もう、快楽が許される気がしていたのだ。そして恋人にもまた、本当に自分なんかと恋人になってくれているのだとしたら、気持ちよくなって欲しいだなんて、初めて思ったのだ。

 天草が頷いたのを確認し、ゆっくりと”コンポタ”が陰茎で入り口を突く。

「ふ、ァ」
「本当に、大丈夫?」
「う、ん」

 答える声が震えてしまったのを天草が認識した瞬間だった。

「うぁあああ!!」

 圧倒的な熱と質量が、天草の中へと押し入ってきた。
 硬いそれは、ゆっくりと、緩慢な動作で動いている。

「ひゃ、ああッ、ンあっ」
「――辛い?」
「へ、平気、だから」

 その言葉に苦笑してから、先ほどまでより早く腰を動かし、更に奥を暴いていく。
 そうする度に天草の体が跳ね、白い腰に、”コンポタ”が手を添えた。
 逃げ場を失った体に、一瞬だけ恐怖を感じ、泣くように頭を振る。

「大丈夫、大丈夫だから、ね?」
「ん、ぁ」

 とけた様な瞳で、浅く息をしながら、そこにいるのが”コンポタ”だと確認して、静かに天草が頷いた。それを見て取ってから、腰に添えていた片手を離して、萎えている天草の陰茎を掴む。片手の指と、親指をあわせて輪を作り、撫でるように擦り揚げた。

「ふァああっ!!」

 その反応を見て取ってから腰を引き、天草の最も感じる場所を突き上げる。

「や、やぁ、ああっ、ふぁ」
「辛い?」

 苦笑するように”コンポタ”が聞くと、涙を零しながら、静かに天草が首を振った。

「そう、良かった」
「う、うん、……あ、ああァっ」
「ねぇ、先生?」
「え、あ?」

 トロンとした瞳で、天草が”コンポタ”へと視線を向ける。

「今、先生の中に入ってるのは、誰の?」
「うう、あああッ、な、なんでっ」
「ん?」
「はァ、そんな、こと、聞くの?」
「聞きたいから」

 笑顔で”コンポタ”が言うと、泣きながら天草が、呟くように言った。

「四、條、く……ん、の――ああああああ!!」

 それを聴くなり激しく腰を打ち付け、前は擦りあげた。

「ヤあああああ!!」

 そのまま果てて、グッタリとした天草は、呆然と天井を見上げた後、疲れきったように眠ってしまった。同時に中へと放った”コンポタ”は、静かにその髪を撫でたのだった。


翌日。

 天草は、良い匂いで目を覚ました。まだ、目覚まし時計が鳴る時間ではない。
 それに安心しながら、着替えて階下へ降りていくと、笑顔の”コンポタ”が立っていた。

「今日はね、油揚げのお味噌汁と、サラダ、後は鮭とね、ひじきだよ」
「あ、有難う」

 照れくさくなって、俯きながら、天草はそう言った。

「まぁまぁ、座って」
「う、うん」

 こんな幸せを、本当に自分のような人間が、甘受して良いのだろうか。
 幸福すぎて逆に不安になってくる。

「ン」

 そうして椅子に座った時、腰に痛みを感じ、同時に足が震えて、全身が気怠い事を自覚した。これは、時折なる症状だ。

「あ、ごめんね。すぐにクッション持ってくるから」

 そう言って慌ててリビングへと向かった”コンポタ”を見送りながら、どういう事なのだろうかと首を傾げる。

「昨日は、先生があんまりにも可愛いから、結構激しくしちゃったしね。体、大丈夫? 怠いとか、足が震えてるとか、腰以外にはない?」

 その言葉に羞恥を感じて、天草は思わず息を飲んだ。
 ――と言う事は、と言う事は、だ。

 恐らくコレまでのそうした感覚も、恐らく性行為によるものだったのだのだろう。
 急に恥ずかしさが増してきて、慌てて手を合わせた。

「だ、大丈夫――そ、その、いただきます」
「うん、いただきます」

 だが、改めて考えれば、こんなやりとりにすら嬉しくなってしまう自分がいた。
 そうして感動していたら、不意に”コンポタ”に聞かれた。

「昨日の事は、どこまで覚えてる?」
「え」

 手に取った味噌汁の碗を取り落としそうになる。

「あ、そ、その……指、二本で、中を突かれて……」
「その後は?」
「前も触られて、出しちゃって……」
「――それから?」
「入ってきて……」
「何が?」
「そ、その……”コンポタ”のが」
「あれぇ忘れちゃった? 僕の事は、四條って呼んで欲しいんだけどなぁ」
「お、覚えてる」
「良かった。それで? それからどうなったの?」
「突かれて、それで、その……」
「なにで?」
「その……だ、だから、四條君ので」
「うん。それから?」
「気持ちよくて……」

 羞恥にかられた表情の天草を見ながら、”コンポタ”は苦笑していた。

 ――もう、大丈夫かな?
 ――先生を闇に突き落としたのが僕なら、絶対に引き上げて光に晒してあげるから。

「治ったみたいだね」
「え?」
「今まで、体を重ねると忘れちゃうって言ってたでしょ?」
「あ」

 その事実に、天草自身もポカンとしている。

「やっぱり、愛の力かな。恋人同士の」

 そう言って笑った”コンポタ”の言葉に、やっぱり天草は真っ赤になったのだった。