<2>安倍柊の始まり(★)


 安倍柊(あべのひいらぎ)、 そう呼ばれるようになった当日から、もう地獄は始まった。

 丁度その時期が前回の≪百鬼夜行≫の直前で、その後も、≪百鬼夜行≫後も平定のために慌ただしかった事も、悪因の一つだったのだろう。同時に、その時の安倍三役では、つい先日まで”柊様”は病床に伏していたし、”桜様”もご高齢だった。”榊様”もだ。

 直接でなくとも、”九尾の力”を供給できる人間は居なかったのだ。そこへ運良く現れたのが、直接”力”を供給することの出来る、新たなる幼い”柊様”だったのだ。

「うっ、ぁ、あああッ」

 涙で顔が乾く暇もない。

 もう断続的に、≪異形≫との戦闘は、その時始まっていた。
 時折帰ってきて、口づけだけして戻っていく七木家の当時の当主――七木晶(ななきあきら) と、最低限のことだけを、限界になると帰ってきて口だけで行う――一宮宗春(いちみやときはる) 以外は、ひたすら来るべき時に備えて”柊様”から力を”頂戴する”ために体を重ねた。

「いやぁあっ、う、ううっ、ン」

 二葉の媚薬で意識が朦朧とする中で、狐栓を開かれ、幼い体には巨大すぎる雄と力が入り込んできては、暴いていく。

 一ヶ月前後、九尾の各当主や、まだ戦える、前代の当主や分家の当主達に散々嬲られた。

 眠る時には、四條に玩具を入れられ、入浴前後のタイミングで五瀬に縛り方を変えられて、後は定期的に媚薬を前から後ろから無理矢理体内へと入れられる。そうして好き勝手に犯されたのだ。

 学校へ行かなくて良いのだろうか、そんな事を考えることなど、実家でひたすら狐線を開かれていた頃から、もう考えなくなっていた。ろくに眠ることは出来ず、だがいつしか、眠らなくとも大丈夫になっている体に気がつき始めていた。

 本来であれば、”贄羊”としてのそうした特性が表れるのなど、自然と狐栓が開く頃――”狐提灯”で戦う頃のことのはずなのに。本家の当主や、生まれついて戦う能力に秀でていた者を除けば、到底有り得ない事象だった。そんな力は、幼い体には大きすぎる。

 だが、誰もそれを気にすることはなく、『流石は”柊様”だ』と言うだけだった。

「あああああっっ」

 瞼をしっかりと伏せて、声を堪えようとしても、感じることを覚えさせられた場所まで強く太い物で突かれ、泣き叫ぶしかできない。

 声が嗄れそうになると、薬入りの媚薬を無理に飲まされる。

 父親に後ろから抱えるようにして抱かれながら、口へと無理矢理瓶から液体を流し込まれた。

「よくやった。お前のおかげで、我が家も二葉本家も安泰だ」

 耳元でそう言われ、滑った舌が中へと入り混んでくる。

「しっかりと”力”をお渡しするよう励むんだぞ。そして”声”でも”体”でも、”気持ちよく”して差し上げるんだぞ。それが安倍家全てのためになる」
「ううっ、あ、ああっ」

 ぐりぐりと小さな胸の突起を痛いほど摘まれながら、そんな声を柊は聞いた。
 隣で媚薬の瓶を受け取り見おろしている母も、笑っていた。

「本当に誉れ高いことです。母も――いえ、もう貴方の方がくらいが高いのでしたね、柊様。柊様のことを誇りに思っておりますよ」

 二人のそんな言葉に、必死で何か言おうと喘ぐのを堪えていると、本家の当主である伯父に口淫された。

「麗しき家族愛だな」
「っ、あ、ああああああ!!」

 結局、前も後ろも全てをグチャグチャにされ、その上効き始めた強い媚薬のせいで、柊は何も言えなくなってしまった。

「いや、いやだぁ、あああっん、あ、あ、あ、も、もう止め……っああああ!!」

 こんなの絶対におかしいと、柊は思った。

 何故こんな事をしなければならないのかがそもそも分からないが、『晴明様のお渡り』があったら、もう、終わると聞いていたのに――これでは、もうどうしようもない。

 最後に学校に行った時、それがとても昔のことのように思えた。最後のあの日は、次の日もごくいつもの通りに始まるのだと考えていたから、翌日には同級生の、空野(そらの) に本を借りる約束をしていたのだったか。

 学校では親戚という事もあって一番仲が良い。空野は本が好きなんだ、と、紫織――柊は、思い出した。柊の中ではやはり自分はまだ、二葉紫(ふたばしおり) 織なのだ。その空野の父親にも抱かれた。

 あらゆる体勢から犯され、場所も様々だった。そんな、一ヶ月だった。

 漸く解放されたのは、一週間ほど、各家の当主の禊ぎの期間がある、と言われた時のことだった。これから一週間は、無理に嬲られることはないと聞いたのだ。

 久方ぶりにしっかりと着物を着せられて、柱に背を預けて柊は座っていた。
 ”柊様”の、お部屋だ。実家ではない。
 安倍本家にある柊の間で、”客間”と”寝室”と”晴明様のお渡りの間”の三つがある。

 客間は基本的には、まだ誰も来客者などいないので開けず、これまではひたすら寝室で嬲られていた。だからこの日も、寝室で座っていた。三日が過ぎた頃だった。

「柊様、よろしいですか」

 すると声がかけられ、返事をする前に襖が開いた。

「あ」

 そこには空野が立っていた。九重空野(ここのえそらの) だ。思わず目を見開いて、何か言おうとしたのだけれど、上手い言葉が見つからない。

「畏れ多くも禊ぎの期間、柊様が狐栓の開閉を忘れてしまわぬようお手伝いさせていただくことを、この九重家が承りました。同時に、次期当主への狐栓解放の訓練にもお付き合いいただきたく――……」

 空野の祖父がそう言った。前に遊びに行った時には、優しくお菓子をくれたおじいちゃんだった。だが今は、しっかりと着付けた和装で、眉を顰めている空野を伴っている。

「空野、座りなさい」

 祖父の声に、空野は無言で座った。

「ご挨拶を」
「……」
「空野。教えただろう」
「……紫織は、もう知ってる。どうして挨拶しないと駄目なんだ?」
「この馬鹿者!!」

 立ち上がった空野の祖父が、激高し、空野を殴った。

「畏れ多くも柊様に向かいなんたることを。分を弁えろ」
「や、止め!!」

 再び殴ろうとしているのを見て取り、慌てて柊が割って入った。

「――ご慈悲を感謝いたします、柊様。空野、御礼を」
「……有難う」
「有難うございます、だろう!! 全く。大変失礼いたしました、柊様」

 何が起こっているのか、柊にはいまいち分からなかった。

「空野、脱がして差し上げるんだぞ、ちゃんと。そして、ご無理をさせぬよう、丁寧に。教えた通りにやるんだぞ――屏風の向こうで待つ。終わるまでは、何があっても声はかけない……来る途中で話した通りだ。心するんだぞ」

 そう言って空野の祖父は、屏風の向こうに行ってしまった。
 何の話か分からず、困惑したまま柊はそれを見送る。
 すると体制を立て直し、畳の上に空野が座り直した。

「……紫織」
「っ、空野……僕は……あの」

 名前を呼ばれただけで泣いてしまいそうになり、その懐かしくすら思える声に心が疼いた。

「もうこれからは、紫織って呼んじゃ駄目だって言われた」
「ッ」
「お前が学校来ないから、どうしたのかと思って聞いたんだ。そうしたら、もう近くでは会えないって言われた。じいちゃんは、どうしても会いたいなら一度だけ、最後に今日、会わせてくれるって……来る途中、今日だけは普通に話していても見逃すけど、もう二度と見逃さないって。俺、意味が分からないよ」
「僕だって、僕だって訳が分からないッ」
「泣くなよ、約束してた本持ってきたから」

 着物の中から、空野が『人間失格』と大きく表紙に書かれた本を取り出した。
 受け取る手が震えた。

「いつか返せよ。けど見つかったら捨てられちゃうかもしれないって聞いたから、棚とかにしまっておけよ、ちゃんと」

 何度も何度も頷いて、柊は立ち上がり、奥の棚の前へと立った。
 中には沢山着物が入っていたから、その箱と箱の隙間に隠した。
 そうしていると隣に、空野が立った。同じくらいの身長だ。扉を閉めてから振り返ると、両手を静かに握られた。

「かわりに、紫織の狐栓っていうのを開ける方法を覚えろって言われた。話聞いてたけど、俺には、エッチしろって、言ってるようにしか聞こえなかった」

 真剣な顔で空野が言った。学校で、それこそ噂話で、下ネタを話す時みたいな単語を口にしているというのに、どうしようもなく真面目な顔だった。そして、最早それが笑うことなど出来ない現実だと、柊もまた悟っていた。

「俺、その……頑張るし、酷くしないし……優しくするから」

 小さな声で空野が言った。俯きながら、両手の温度を確かめて、柊もまた頷いた。

 本当はずっと友達でいたい。だけど、こうしてでも、会いに来てくれたことが嬉しかった。ちゃんとまだ、自分が紫織だときちんと覚えてくれている人がいたのだと、嬉しかった。

 そのまま手を引かれ、布団の上に座らされる。
 着物を解かれ、噛みつくように首筋にキスされた。
 くすぐったくて、不思議な感じがした。

「紫織」

 名を呼ばれて空野を見ると、静かに唇にキスをされた。
 柔らかくて温かくて、そんなキスをするのは、初めてのことだった。
 それから胸の突起を小さな指で弄られる。
 慣らされきっている柊の体は、たどたどしい空野の指先にもピクンと反応した。

「ン……ふっ、ぁ」

 それから小さな陰茎を両手で撫でるように上下され、肩が震えた。
 媚薬を使われていない上、狐栓も閉じたままだというのに、幼い体が快楽を覚えたのなど初めてのことだった。

「あ、ああっ……空野っ」

 タラタラと蜜が零れ始めた時、空野が囁くように言った。

「気持ちいい?」
「う、うん」

 真っ赤な顔で柊が頷くと、微笑してから、空野が人差し指を舐めた。
 そして、ゆっくりと柊の中へと差し入れた。

「ううっ」
「痛い?」
「だ、大丈夫……っ」

 こんな風にゆっくりと入れられたことなど無くて、息が震えた。

「あ、ああっ」

 それから時間をかけて解され、更にもう一本指が入ってきた。
 こんな風にされたことなど、本当に今までには一度も無かった。

「あ、あぅ、んン……ッ、ふ、あ……」

 もどかしくなって腰が震え、中でバラバラに動く指に翻弄される。
 その時空野の指先が、感じる場所をかすった。

「やああっ、あ、あ」
「ここ?」

 気づいた空野が、指を揃えて、刺激する。

「う、ううンあ、ああっ、や、あ」

 呼吸する度に声が漏れてしまう。
 穏やかに刺激され、同時に前にも熱が募っていった。

「入れて良いか?」

 必死に頷くと、涙がこぼれた。悲しくてではなくて、酷すぎる快楽からでもなくて、純粋な気持ちの良さからだった。

「ンァあ」

 ゆっくりと空野の陰茎が押し入ってくる。

「ふぁ、あ、ン――っ」

 それをゆるゆると動かされた時、初めて、そう生まれて初めて媚薬無しで、柊は果てた。
 弛緩した体の奥へと、空野が体を進める。
 そうして家で教わった通り、”力”を込めた。

「ひっ」

 瞬間、狐栓を開かれて、柊は目を見開いて、ガクガクと震えた。
 怖くなって思わず空野の服を掴む。

「あ、ああ、あああああ、ううああああっ」

 そうされてしまうと、もう後は訳が分からなくなった。
 空野の込める”九尾の力”の大きさが増す度に、奥深くまで縦横無尽に暴かれていく感覚がして、体が震えた。先ほどまでの優しい快楽とは異なり、解け合うような感覚がする。クラクラしながら、必死で柊は空野に抱きついた。媚薬無しで狐栓を開かれたのも初めてだったし、”力”を込められたのも初めてだった。

「っ、ごめん、紫織」
「あ、ああっ、うああああ」
「俺、もう……ッ」
「あああああ――!!」

 掠れるような声で呟き空野が果てた瞬間、体から一気に大きな”力”が引き抜かれるような感覚がした。訳が分からず、ただもう体に力は入らなくて、ぐったりと布団の上に横たわる。

 すると、ゆっくりと空野が体を引いた。なんだかそれが寂しく思えるほど、柊は初めて、充実感を感じていた。こんな風ならば、力を渡すというのは、きっと悪くないのかも知れ無いだなんて思っていた。

 形を保つので精一杯だった心が、しっかりと形を取り戻した瞬間だったのかもしれない。本当にそれだけ優しく思えて、気持ちが良かったのだ。

「帰るな。今度また、会えると良いな」
「うん……本、絶対返すから」

 そう言って横になったまま、柊は空野を見ていた。
 着物を整え立ち上がり、空野は、屏風の向こうで待つ祖父の方へと歩いていったようだった。それから声が聞こえてきた。

「どうだった?」
「――……気持ち悪かった」

 それは形をしっかりと取り戻した心が、再び壊れ始めた契機の一言だった。
 ピシリと音を立てて罅が入ったかのようだった。

 言われてみればと、柊は気がつけば苦笑しながら泣いていた。

 男同士で、同級生とシて、それで沢山の大人の人とヤって、それで気持ち良いなんて思う自分は、本当に気持ちが悪い。

 中身など読んだ事は無かったが、空野から借りた本のタイトルだけが妙に頭に焼き付いていた――『人間失格』、ああ、それはきっと自分の事だ。

 禊ぎの期間が終わると、今度は襲名披露までの間、三ヶ月間ずっと昼夜を問わず柊は再び犯され始めた。予定は、九尾家の当主に合わせられるから、柊は堪えるしかなかった。何も予定がない日であれば、入れ替わり立ち替わりやってきて、力を求められ、あるいは、体を求められ、ただひたすらそれに応えていく。

 誰の手もなくなったのは、襲名披露の五日前のことだった。
 入浴させられた後、後ろ手に拘束され、萎えた状態の前には輪を填められ、後ろには媚薬の瓶に一度浸した張り型を、躊躇無く押し込まれた。

「うあっ」

 このような事はいつもの事だから、何が始まるのか、柊には分からなかった。
 それから瓶を傾けられ、もう馴染んだ媚薬を飲ませられる。

 すると体が熱くなり、前は達したくて仕方がないほど張り詰めたが、イけず、後ろの張り型も、動くわけでも何でも無かった。その上カチリと音がして、貞操帯を付けられた。

 自分でどうにかしようにも、縛られていて、動けない。

「そのまま暫く待っていて下さい、柊様」

 伯父である二葉と、五瀬の当主にそう言われ、横たわったまま柊は瞬きをした。
 体が熱くて熱くて熱くて、辛い。

 これまで散々グチャグチャに犯されてきたのに、いきなり、達したいという熱だけを与えられたまま放置されたのだ。少しで良いから触って欲しかった。しばらくって、どのくらい? もう訳が分からない。辛い、辛い。イきたい、出したい、もういやだ。

「ン……っ」

 しかし口も縛られているため、声も出せない。
 ただ一人、窓もない暗い部屋の布団の上に、縛られて転がされていた。
 その上、後になって柊は聞いたのだが、襲名披露の日程が何度関わり、本来は三日でいいはずが、まる五日間放置されたそうだった。

 それから、漸く部屋から外に出されたと思ったら、着物の下をはだけられ、足を折り曲げさせられて、皆に見えるように座らされた。

 誰かが何かを言っていたが、体が辛すぎて、柊の頭には何も入ってこなかった。

「ンンン、ゥああ――!! いやぁああああ!!」

 貞操帯は外された物の、前の輪はそのままに、いきなり見知らぬ割腹の良い男性の手で、後ろの張り型を乱暴に動かされた。達したくて仕方が無くて、柊が泣き叫ぶ。しかし、その手が止むことはなく、人を変え、そのまま半日以上、ずっと張り型を様々な人の手で動かし続けられた。この時ばかり、襲名する三役の体に触れることを許される親戚なのだという。張り詰めた前は、もう痛みすら覚え始めていた。

 漸く襲名披露が始まる頃には、もう柊の理性は何処にも無かった。

 その後、戦況が一段落した様子で、他の様々な儀式を行わせられた。

 まずは花瓶にさせられた。
 生け花? 花瓶? 馬鹿げていると思いながらも、それでも柊は堪えた。

 手ほどきとして初めは、排出した二葉の分家が花瓶の指南をした。
 最早父だなんて思わないようになっていた。思わないようにしようと決めていた。それでもやはり顔を見れば、お父さんだった。

 その後九つの家で、どの家が一番優れているか競うと言われ、一軒一軒で花瓶役をさせられ、菊門を含めて花まみれにされた。その度に一々、各家や親戚が集められ、品評するのだ。花の綺麗さと――柊の淫らさを。

 次は、書道だった。
 これは一宮から始まり九重までに、散々好き勝手に筆で嬲られた。
 各家とも前当主が行って、二周・三周と、各家を訪問させられた。

 筆遣いを教えると言われ、最終的には半紙役にされて、これもまた、体に文字を墨で書かれて、皆に披露と相成った。もう羞恥なんて物はなかった。ひたすら早く終わって欲しいと願うだけだった。

 一々付きまとう快楽だけが嫌で、気持ちいいと思う己の体を呪った。



 そのまま、似たような日々を繰り返し、数年が経った。

 もう本来であれば中学校に通う年齢になっていて、背も伸びてきた。まだまだ少年としか形容できなかったが、柊はもう、そんな毎日を受け入れつつあった。

 ある日媚薬を飲まされないと思っていたら、裸にされ、縛られて、正面にビデオカメラを置かれた。媚薬無しで、自慰するように強要されたのだ、カメラの前で。カメラだけではなく、周囲には写真を撮ろうと構えている沢山の人々がいて、他にも見守っている何十人もの人々がいた。

「媚薬なんて飲まなくても、気持ちいいのがお好きな柊様ならば、すぐにご自分の手で感じてしまわれますよね。嫌困ってしまいましてね、柊様を媚薬漬けで無理矢理手込めにしているのではないのかと言われて――証拠を残さなければ。それに、今後の”お役目”の事を考えても、今記録して置いた方が良いでしょう」

 父親の声だった。スイッチのはいる音がした。様々な場所にあるビデオカメラが次々に起動していく。

 目が、『早くしろ』と語っていた。

 周囲を一瞥するが、ただ皆楽しそうに見守っているだけだった。既にシャッターを切っている者も居て、フラッシュが時折光る。従う以外の選択肢が何処にも無かった。

 必死で己の手で触れ、なんとか勃起させる。ひたすら気合いを入れて、なんとか果てた。義務だった。

 何枚も何枚も写真を撮られ、カメラが回っていた。

「それだけでは足りませんでしたか」

 その声を認識した瞬間には、前から後ろから、様々な人間に犯された。
 そうされている間も、カメラは回り続け、フラッシュは光っていた。

「ん、うううっ、うあ」

 口の中に射精され、ボロボロとそれを零していると、すぐに次の別の陰茎を銜えさせられる。後ろにはまだ誰かの陰茎が入ったままだった。少なくとも各家の当主でないことは分かったが、それ以外はもう誰に何人に体を暴かれているのか、さっぱり柊には分からなかったし、もうどうでも良いことのように思えた。

 だから、安倍桜(あべのさくら) を襲名したのが、自分よりも一つ年下の少年だと聞き、柊は心底安堵したのだ。それが、桜にも己の役目としても、悪いことだとは分かっていたが。

 ――嗚呼、コレで解放される。

 そう、思ってしまったのだった。誰も、多分柊を責める権利はないのだろうが、少なくとも柊は己を責めることになる。