<2>休講☆


 今日は、大学に行かなくて良い日だった。
 だから俺は、安眠を貪っていた。俺が休みだという事は、時雨さんも知っている。

 だが、その時インターホンが鳴ったから、無理に体を起こした。
 この時間の来訪者――?
 アパートの生活費は、払ったし……。
 そんな事を考えていたら、時雨さんと目があった。

「出ましょうか?」
「あ、いや、俺が行ってきます」

 そう告げ毛布から出て、いそいそと俺は玄関へと向かった。
 チェーンを外し、鍵を開ける。
 すると――……


「一宮さん!?」


 驚いて声を上げると、眉を顰められた。

「宗信と呼べと言わなかったか?」
「あ、すいません」

 だが、彼の来訪に、俺は完全に狼狽えていた。
 呆気にとられて、言葉を見失う。

「ここに、住んでいるのか?」
「はい」
「信じられない」

 すると宗信さんが溜息をついた。

「こんなぼろいアパートに、仮にも榊様を住ませるわけには行かない」
「ぼろくて悪かったですね」
「すぐに用意をしろ」
「え?」
「最高級のマンションの、最高級の部屋に引っ越しさせる」
「いや、え? そんなの、家賃払えませんよ!」
「そのくらい一宮で持つ」

 嘆息しながら、宗信さんが言った。
 本当に本気なのだろうかと困惑したまま、俺は扉を開け放ち家に上げる。
 それから宗信さんが、時雨さんに概要を説明した。
 俺はぼんやりとそれを見守っているしかできない。

「それは、良い案ですね――すぐに引っ越しの準備を致します」

 そんなこんなで、俺の意志などほとんど関係無しに、俺は高層ビルの十七階に引っ越すことになった。四階だけ空室で埋められているらしいと聞いたが、十七階は最上階だった。

 入ってみれば、既に家具も用意してあり、本当、何処のセレブだよ、という感じだ。

 落ち着かなくてきょろきょろと周囲を見渡してしまう。
 時雨さんはと言えば、クローゼットに手際よく俺の服をしまい、持ってきた机の上のラックには、教科書類をならべている。

「あの、俺、本当にここに住むんですか?」
「不満なら、もっと良い場所を探してやる」
「いや、え? いやあの、そうじゃなくて、こんなに高級な場所……」

 宗信さんの言葉に狼狽えて、息を飲んだ。
 すると、唐突に手を引かれた。

「時雨、暫く外に出ていろ。食べ物でも買ってこい。明日の朝戻れ」
「承知しました」

 宗信さんの声に、合い鍵を持って時雨さんが出て行く。
 残された俺は、ソファに座り、扉が閉まる音を、ただ聞いていた。

 ――その時だった。

 唐突に唇を奪われて、舌を絡め取られる。

「ふ、ぁ」

 それだけで、クラクラしてきて、曖昧模糊とした感覚に俺は陥った。
 すると両手で腰を支えられ、脇腹をユルユルと撫でられる。

「っン」

 その感触が辛くて、思わず目を伏せた。

「物足りないんだろ?」

 そのまま暫くくびれを撫でられ、右耳に舌をつっこまれた。

「ふぁあっ」

 体が辛い――熱い、熱かった。

「!」

 耳朶を唐突に噛まれ、目を見開き背を撓らせる。

「本当に、淫乱だな。まだ触れているだけだぞ」

 嘲笑するように宗信さんが言った。

「俺は、淫乱が死ぬほど嫌いだ。欲しいなら、跪けよ」
「誰が……!」

 なんとか体を制御しようと肩で息をしながら、俺は宗信さんを睨め付ける。
 しかし、不意に宗信さんが手を離したせいで、ガクンと力の抜けた体が、床に落ちた。
 そんな俺の陰茎を刺激するように、失笑した宗信さんが足を伸ばした。

「ッ」

 ボトムスの上から足で陰茎を刺激され、目を見開く。

「あ、ああっ」

 声が漏れるのを、止められない。

「やぁッ」

 軽い刺激で、何度も足を動かしながら、スッと眼を細めて宗信さんは笑っている。

「ヤだ、嫌だ」
「だったら、さっさと俺のを舐めろ」

 そう言って宗信さんが、下半身の着衣を下ろした。
 まだ反応こそしていないが、巨大だと分かる陰茎に、背筋が震える。

「早くしろ」
「ひっ」

 再び足で自身を刺激され、睫に涙を浮かべたまま、おずおずと俺は手を伸ばした。
 震える手で、宗信さんの陰茎の両側に触れる。
 両手を動かしながら見上げると、明らかに蔑む瞳で宗信さんが見ていた。

「咥えろ」
「ッ」
「早くしろ」

 その言葉に、舌先を出して先端を舐めてから、宗信さんの男根を口へと含んだ。

「浅い」
「ん、グっ」

 口内の奥深くまで腰を進められ、辛くなって俺は嗚咽混じりの声を出す。
 次第に宗信さんの陰茎が大きくなり、苦しさが増した。
 だが、口から離すのを許さないように、俺の髪をつかんで、宗信さんがさらに奥へと顔を無理矢理寄せた。

「っ、は、あ」

 喉の奥まで突かれ、息が出来ない。
 その上腰を動かされ、嗚咽が止まらない。

「出すぞ」
「ふ、ぁ」

 不意に、一気に引き抜かれ、顔に向かって何かが飛んだ。
 白濁とした液が、俺の顔を汚す。
 呆然として、俺はそれを見ていた。

 たらたらと髪を汚し、頬を伝っていく白い精液が、俺の顔を汚していた。

「まぁ、少しは力が手に入ったな」
「……うッ」

 泣きそうになった俺は、唇を噛みしめてそれを堪えた。
 その上――ただ舐めさせられただけなのに、熱くなった自分の体が、何よりも気持ちが悪い。

「淫乱には、義務じゃなきゃ近寄る気も触る気もない、じゃあな」

 そう言うと着衣を整え、宗信さんが立ち上がった。

「こんな淫乱に、こき使われるのも大変だろうな、時雨も。執事だなんて、都合の良い言葉だな――解放してやれ、さっさと」

 それだけ言うと、宗信さんは出て行った。

 一人、室内に残された俺は、熱い体を必死に静めようと努力するしか無かった。何とか堪えようとして、その日は唇を噛みしめながら眠ったのだった。