<11>弟★


「八坂家御当主がいらっしゃっています」

 その言葉に、俺は気怠い体を起こした。ぼんやりと着物を着付けてくれる人を見守る。
 使用人――この本家には、そう呼ばれている人が幾人もいた。
 中でも時雨さんは、俺の専属なのだという。
 だがこうした場での着付けなどは、他の人達がしてくれる。

「ご無沙汰しています」

 通された和室の障子を開けると、懐かしさを覚える舞理の顔がそこにはあった。
 久しぶりにきちんと会った舞理は、穏やかな表情をしていた。
 僅かな緊張がそれでほぐれて、俺も笑顔になった。

「本当に久しぶりだな。舞理」
「うん。俺も――祀理って呼んでも良い? 榊様じゃなくて」
「当たり前だろ」

 自然に浮かんでくる言葉に、そんなやりとりに、俺は嬉しくなっていた。
 元々俺には、そんな大それた家族愛など無かったのかも知れない――けれど、まるで尊厳を奪われ、モノのように扱われている現在には、それが心のよりどころになった。

 ――だがそれは、俺の勘違いだったらしい。

「っ」

 息を飲んだ瞬間には、俺は畳の上へと押し倒されていた。
 呆然としている内に、俺の陰茎には金の輪がはめられる。

「会えて嬉しいよ。ただ、こんな形以外で会いたかった。俺は、もう”八坂家”の当主なんだ」
「……舞理……?」

 目を見開いた俺の前で、背筋が寒くなるような笑みを、舞理が浮かべていた。

「何人に抱かれたの?」
「な」
「気持ち良かった?」

 嘲笑するように眼を細め、弟が言う。

「俺は、弟として恥ずかしいよ……お仕置きが必要だね」

 そう告げ舞理は、俺を無理に四つんばいにさせた。
 和服が乱れ、俺の双丘が露わになる。空気が、俺を撫でた。

「止めろ、おい」

 反論しようとした俺の手首に、ガチャリと舞理が銀の手錠をはめた。

「待て、俺達は――」
「兄弟? だから?」
「っ」

 涙が浮かんでくるのが分かった。けれどそれは多分、体を重ねられることを悟ったからではない。俺に触れているのが、実の弟だからだ。いい知れない背徳感が、俺の体を震わせた。

「止めろ、止めてくれ」

 制止する俺の声もまた震えた。我ながら、情けない声音だった。
 その時のことだった。

 バシン。

 そんな音がして、俺は臀部に熱と痛みを感じた。
 恐る恐る振り返ろうとしたら、また叩かれた。

「ひ、ッ」

 舞理が、唇に弧を張り付けて、俺の尻を叩いていたのだ。

「や、嫌、止め……ン」

 痛みをこらえようと唇を噛むが、そんな俺の反応にすら気を良くした様子で、またバシンと音が響いた。

「あーあ、兄さんは、本当に淫乱みたいだ」

 わざとらしく耳元で、兄と呼ばれた。そのまま、耳の後ろを舐められる。
 ビクリと跳ねた俺の体を、更に何度も、舞理が叩いた。

「ひ、ゃ、ああっ、う」
「赤くなっちゃったね――叩かれてるのに、気持ちいいの?」

 その言葉に、俺は自身から先走りの液が垂れ始めた事を自覚した。

「昔から、祀理兄さんに触れて良いのは、俺だけだって決まっていたのにね」

 馬鹿にするような声でそう告げ、舞理が笑った。
 そのまま後ろから抱きすくめるようにされ、弟の体重が背にかかった。
 犬や猫が後尾をしているような体勢になり、俺は後ろから首筋を軽く噛まれた。

「ンあ――ッ、ひ、ひゃぁっ、んぅ」

 ゾクゾクと体に震えが走る。舞理の口に皮膚を吸われる度に、腰が跳ねた。

「や」
「嫌なんだ? じゃあ、次は何をしようかな」

 失笑するように笑った後、舞理が、片側に置いてあった黒い箱に手をかけた。
 器用に片手で朱色の紐をほどき、蓋を開ける。

 弟の手が取り出した、そこに入っていたモノを見て、俺は目を見開いた。
 そこには、丸い球体がいくつもついた、張り型があったのだ。

「ま、待ってくれ、そんなの――」
「嫌だよ」
「うぁああっ、くッ、ン――!!」

 そのまま、丸い球体を一つ、中へと押し込まれた。苦しさに息が出来なくなって、何度も頭を振った。すると、二つ目を押し込まれた。

 ボコボコとした球体が、俺の中を犯していく。呆然としていると、今度は抱きかかえるようにされた。

「ん、ぁ」

 そしてゆるゆると陰茎を扱かれる。既に先走りの液で濡れていた俺のソレを、悦楽で覆い尽くすかのように、舞理は繊細な手つきで追い詰めていく。

「うァ、あッ、ン――ッ」

 三つめの球体を押し込まれたのはその時だった。
 既にそそり立っていた俺の肉茎は、しかしその衝撃にすら、快楽を煽られる。

「止め、待、出る、出るからッ」
「出せるの?」
「――ッ」

 舞理の声に俺は、キツく陰茎に食い込んできた、金の輪の存在を嫌でも自覚させられた。慌てて藻掻いて、両手でその輪を取ろうとするが、どうにも出来ない。

「な、なんで……っ、ぁア、舞理ぃ」
「ん? 何?」

 四つめの球体を押し込まれながら、俺は歳がいもなく泣き叫んだ。

「嫌だ、と、取って……ふァ、あ、ああっ」

 最後の五つめを押し込まれながら、俺は涙をこぼす。
 頬が濡れていくのが自分でも分かった。

「良いよ」
「う、ううっ」
「後ろから、この白い卵を産んでくれたらね」
「なッ」

 俺の両足を抱え、よく見えるようにし、舞理が笑った。
 自分で、産む?
 朦朧とした思考の最中、混乱した胸中で、体が震えた。

「愛してるよ、祀理。さ、早くして」
「うァ!!」

 球体の芯を貫いているらしい棒を、舞理が揺らす。
 最も感じる場所を、それで刺激された。

「あ、あ、あ」

 喘ぎすぎて、俺の唇からは、多分涎が滴っている。それを舐め取るようにしてから、優しく舞理が俺にキスをした。

「んぅ」

 意を決して俺は、体に力を込めた。
 一つ、二つ、三つ――体の奥から、白い球が出てくる。

「も、もう許してくれ……」

 消え入りそうな声で、俺は呟いていた。

「駄目だよ、ちゃんと全部、産んで」
「ンあ――!!」

 出てくる感触に悶えながら、俺は、四つ、五つと、全ての球体を孔から出した。
 力尽きた俺の内部から出てきた球体を、暫し緩慢に舞理が見据える。

「や、は、早く」

 それよりも、前の拘束を外して欲しくて、俺は泣いた。

「早く欲しいんだ?」
「うあ――は、ァ、ッ――……!!」

 しかし舞理の陰茎が、俺の奥深くを貫いた。
 そのまま、また四つんばいにされ、片手では腰を捕まれ、もう一方の手では前を扱かれる。

「いやぁ――んぁああああ!!」

 一際大きな声で俺が叫んだ時、舞理が、金の輪を外してくれた。
 中に熱い液体を感じながら、俺も果て、そのまま畳の上で意識を失った。

「愛してるんだよ、本当に」

 どこか切なそうな舞理の声が聞こえた気がしたが、俺にはもう、何も理解できないのだった。思考が途切れ、眠ってしまったのだから。