<9>姿見★
気怠い体を引きずるようにして、俺は廊下を歩いていた。
最早――誰と何度、体を重ねたのかも分からない。
すると丁度障子を開けた青年と目があった。
「一宮さん……?」
「宗信と呼ぶことを特別に許してやる」
淡々とそう言うと、宗信さんは室内へと振り返った。
中からは、お茶を点てていたのか、良い匂いがしている。
「入れ」
それは多分、俺への質問では無かった。ほぼ無理矢理俺は、中へと通された。
ピシャリと閉まった襖を見据え、首を傾げる。
この離れには、恐らく、宗信さん以外の人気は、俺しかない。
「此処で自慰をしろ」
しかし続いた言葉に目を瞠り、思わず宗信さんを見据えた。
「な、何を……」
「慣れたもんだろう、この淫乱」
すると言うが早いか、後ろから抱きすくめられた。そして座っていた俺の両膝を、宗信さんが持ち上げる。下に何もつけていなかった俺は、陰茎が空気に触れるのを自覚した。
「早くやれ」
「そ、そんなの――」
ブルブルと俺の太股が震えた。
「見ていてやる」
失笑するように耳元で囁かれ、俺の体は熱くなった。散々快楽に堕とされた俺には、それだけでも辛い。
「っ」
だが、こんな屈辱は堪えられない。そう思ったのだが、振り返り見据えた宗信さんは冷ややかな顔をしていた。おずおずと両手で、自分のそれに触れる。
「ふッ」
思わず声が漏れたが、何度か刺激する内に俺の男根は立ち上がり始めた。
先走りの液が漏れ始める。
「気持ちいいか?」
嘲笑うようにそう言われ、キツク目を伏せた。
ブルリと震える体が止められない。押し開くように持ちあげられた両方の太股まで、震えているようだった。
「だらだら下まで垂れているな。よくこんな淫乱を抱く気になるものだな。気が知れない――だがな、お前を抱かないと、強い力が出せない。まさに適職だろう、お前にとっては」
馬鹿にするように笑い、俺から垂れた液を指に掬って、二本の指を宗信さんが無理に中へと押し込んだ。
「ヒぁ、ア」
その感触が痛くて辛くて、身をよじる。
「ひくついているな、入り口が」
「ッ」
「その上、中は絡みついてくる」
「は、離して」
「事が終わったら、な」
そう言って吐き捨てるように笑った後、ぎちぎちと音を立てて、下から無理に男根を押し込まれた。
「ンあ――!! イヤ、痛っ、あ」
「痛いのが好きだという噂だが」
「や、あ、違っ、んン――!!」
慣れきった体は、それでも動くのを止めてくれない。下から突かれ、深く深く宗信さんのソレが入ってくる。
「や、ヤだァ――ッ、うあ」
「もっと酷くされないとイヤか?」
「待って、待、違……ふ」
精一杯首を振るのに、宗信さんはただ笑っているだけだ。
「正面を見てみろ」
「……!」
その声に目を開けば、正面には姿見があった。
鏡には、俺の体と、繋がった宗信さんが映っている。
「な、なんで……ッ、っ、こ、こんな」
途端に羞恥にかられて、何とか逃れようとしたのに、力の入らない俺の腰をおさえ、宗信さんはせせら笑っていた。
「動け、自分でな」
そのまま一度強く突き上げられた後、俺は訳が分からなくなった。
腰を前後に揺らし、羞恥しているのに、それなのに、気持ちの良い場所を刺激されたいという、それ一色の思考に覆われる。
「あ、ああっ」
「へぇ。此処が好きなのか」
「うッ、あ、ああっ、んぅ」
俺の反応を見て、嘲笑いながら、宗信さんが突き上げる。
「ふ、ア」
ぼんやりとしてきた霞む思考で泣いていると、畳の上に引き倒された。
「本当に、淫乱なんだな。こんなのが三役だなんて、呆れてものも言えない」
「うう……は、ぁ」
俺だって、好きでなった訳じゃない。
だが、仰向けにされ、激しさを増した宗信さんの自身に突かれる度に、俺は確かに嬌声を上げていた。
「ああッン――は」
「喘げ」
「やぁッ、うンぁ……あ、ああッ」
「お前の取り柄は、色気だけだ」
馬鹿にするように笑いながら吐き捨て、更に宗信さんは腰の動きを速くした。
それから俺の乳首を両手の指先それぞれで摘む。
「う」
「胸でまで感じるのか」
「イヤ、イヤだ」
「お前の体は悦んでいるみたいだけどな」
今度は腰を退き、ユルユルと宗信さんが、震動させた。
「ンあ――!! あ、ああ、ぅあ」
その感触に堪えきれなくて、同時に快楽を煽られて、体がガクガクと震えた。
結果、何も分からなくなり、俺は宗信さんの首へと腕をまわす。
「っ」
すると宗信さんが驚いたような顔をした。
だがその時には、最早俺の意識は飛びかけていて、次に深く突かれた瞬間には精を放ち、気絶していた。