5:夜桜☆



 宴会終了後、酔いつぶれた有馬を山縣が背負った。そして羽染と朝倉も含めた四人は、朝倉の邸宅へと向かった。

 薄闇の中、酔いの火照りをさましてくれる、心地の良い風が吹いている。
 もうすっかり夜更けだ。

 下弦の月が覗いていた。

 縁側の桜の木の正面に座り、朝倉は山縣を見る。
 山縣は、少し間をおいた真横の池の前に座っていた。
 二人ともそれぞれ柱に背を預けている感覚だ。

 有馬は二人の真後ろの和室の布団の上で寝ている。
 羽染は朝倉と壁を挟んで向かい側にある柱に背を預けて目を伏せていた。刀を腕で抱きかかえて、片膝をたてて座っているのだ、羽染は。

 随分と皆は酔っぱらった。

 朝倉はそんな風に考えながら、少しだけ身を乗り出して障子から顔を出した。
 背後にいる羽染を見る。

「綺麗だなぁ」

 長いまつげが影を落とす白磁の頬を見据えながら、朝倉は呟いた。
 羽染の顔立ちは、決して女性らしいものではなかったが、何となく艶があるのだ。

「確かにな」

 辛口の冷酒の入った徳利を傾けながら、山縣が頷く。
 山縣は、辛口の日本酒が何よりも好きだ。これになれると、会津の辛口酒など、甘く感じることが多い。にもかかわらず、会津出身の青年の甘い姿など、見たことはなかった。

 だが今日は、少しばかり、年相応の姿を見たように、山縣は思う。

「有馬の前だと、羽染もちょっと幼くなるな」
「そうかもしれない」

 朝倉は答える。
 すると猪口をぐいっと煽りながら、山縣が目を細めた。

「だからこそ危ないんだろうな」

 真剣味の増した山縣の声。
 それに対し、朝倉が膝の上で、指を組む。

「――今でも羽染は、僕の命を狙っているわけか」
「羽染のことを思うんなら、あんまり優しくしてやるな。苦しむのは、羽染だ」
「そんなの僕の自由だろ」

 朝倉はそう言って笑った。まるで自身の命を、賭けて遊んでいるような顔で。
 溜息をつきながら、山縣が半眼になる。

「気持ちは分からないでもない――俺だって、良くしてやりたいとは思う」
「山縣がそんなことを考えるのは珍しいな」
「お前ほど珍しくない。朝倉なんて、有馬にすら優しくないだろ」
「厳しくするのも優しさの形だろ?」
「確かにお前に優しくされたら死ねる。もう、終わったって思うわ」
「それにしても悔しいな。羽染には、故郷よりも僕を選ばせたいものだね」
「やってみろよ」

 山縣のその言葉に苦笑してから、朝倉が立ち上がった。
 室内へと入り、刀を抱えて眠っている羽染の前に、膝立ちで座る。

「羽染、寝てるのかい?」
「……」

 健やかな寝息を漏らしながら、羽染は何も答えない。

「唇が欲しくなるな」

 朝倉はそう言うと、静かに顔を近づけた。


「!」


 唐突に感じた自分以外の体温に、羽染は気がつくと抜刀していた。
 片手で相手の体を押し倒す。
 そしてもう一方の手で、刀を相手の顔の真横に突き刺した。

「っ――!!」

 そして目を見開いた。
 自分が押し倒した相手が朝倉大佐であること、刀を真横の畳に刺した相手が朝倉であることを、羽染は理解した。

「あ……」

 冷や汗が、こめかみから頬へと、そして背中から下へと伝い始める。
 まるで時が止まったかのような感覚で、正面から朝倉の顔を、羽染はのぞき込んだ。

「ぐッ」

 その瞬間、後ろに両手を締め上げられて、羽染は呻いた。

「そんなに怯えるもんじゃねぇよ」

 気がつくと、山縣の手で、羽染は身動きを封じられていた。
 手をねじり上げられ、鈍い痛みに襲われる。

「何かお前、昂ぶってんな。酒のせいか?」

 後ろに体を引かれ、山縣に抱きかかえるようにされる。
 羽染は己の失態と、いまだに緊張から高鳴る鼓動に嫌気がさして、俯いた。

「申し訳ありません……寝ぼけて……」
「寝ぼけて命を取られそうになるなんて叶わんな」

 冷たい声で朝倉が言う。瞳に浮かぶ色も、同様に冷たい。

「責任とって欲しいな」
「……どんな処罰でも」

 羽染が小さな声で告げると、フッと朝倉が笑った。

「羽染。こういう時の熱の解消の仕方、誰にも習わなかったのかな?」
「え?」

 何の話か分からずに、顔を上げた羽染が首を傾げる。

「教えてやるよ」

 山縣がそう言って苦笑する。
 そして羽染を後ろから抱きかかえたまま、和服の合わせ目から手を差し込んだ。

「!」

 呆気にとられて羽染が瞠目した。
 その時乳首をさぐり当てた山縣が、両手でその突起を摘む。

「っ」

 ギリギリのラインで痛みがないのに、強い刺激。
 羽染はその感覚に、息を飲むしかない。

「もう少し足を開いてくれないかな?」

 一方の朝倉は、羽染の両足を押し開く。
 それからグイッと膝を持ち上げられた感触に、慌てて羽染が足を閉じようとした。

「んー」

 しかしそれを見ていた山縣が、羽染の胸の突起を撫でながら、首筋に吸い付いた。

「ふ」

 甘い吐息を上げて、一瞬羽染の体の力が抜ける。
 それを見逃さず、朝倉が、羽染の楔を両手で握り、服を完全にはだけさせた。

「あ」

 そのまま朝倉に雄を口へと含まれ、羽染は思わず声を漏らした。

「あ、あ……っ……」

 朝倉の口の動きに合わせるように、山縣に規則正しく乳首を嬲られる。

「止め……お止めくださッ……こんな、の」
「羽染、会津じゃどうだか知らないけどな、こんなの良くあることだぞ」

 からかうようにそう言って山縣が耳元で笑った。

「可愛い副官を手込めにしたい上司なんて腐るほどいる。覚えておくと良い」

 口を離して朝倉がそう言った。それから唾液と先走りの液が入り乱れて濡れた、羽染の下腹部を指でなぞる。

「っ」

 真っ赤な顔で声をこらえている羽染は、大変淫靡だった。
 綺麗なものを汚したい――それは、あるいは朝倉と山縣が共通して持つ、加虐心だったのかも知れない。

「ッ、ふ、ぁ……ア」

 繊細な刺激を、後ろから山縣に乳首へと与え続けられて、羽染は体が熱くなるのを感じていた。じわりじわりと、熱がたまっていく。

 まるで自分のモノではなくなったかのように、山縣に触られる度に、意識の統制下を外れて乳首が疼くのだ。

「……ッ」

 無我夢中で羽染は頭を振る。
 するとそんな羽染を落ち着けようとするかのように、朝倉が正面からのぞき込む。

「羽染は、乱れた事ってあるの?」
「え……んッ、ぁ……」
「無ぇだろ、どう見ても。乱してやろう」
「乱してやりたい気持ちは分かるけどね、山縣。これが羽染のトラウマになったら、可哀想だろう? 折角僕とお前がいるんだからさ」
「俺とお前が本気出したら、羽染は二度と引き返せなくなるだろ」

 山縣と朝倉のそんなやりとりを、朦朧とした意識で羽染は聞いていた。

「じゃあ本番は無しや」

 朝倉はそう言ってから、再び羽染のソレを口に含んだ。

「っ――!!」

 前を朝倉に咥えられ、後ろから乳首を嬲られ、羽染は悲鳴を飲み込む事に必死になった。

「何で声出さないんだ?」

 山縣が、耳の後ろを舐めながら問う。

「ふッ……ン……」
「ま、声を出したら、有馬が起きるかも知れない」

 楽しそうに言った朝倉の言葉に、羽染が目を見開く。

「っ!!」

 瞬間、山縣の手が、羽染の陰茎へと伸びてきた。

「朝倉、そろそろ開放してやろう」
「そうだね」
「うッ」

 山縣の手で絶頂へと促されながら、羽染がきつく目を伏せ、体を震わせる。
 先端は朝倉に咥えられたままだ。

「ひっ、ぁ……っ……」
「気持ちいいか?」

 そう山縣に問われた時、羽染は小さく頷いた。

「――っは、あ……ン――!!」

 そのまま羽染は、精を放った。
 そして意識を手放した。



 ただ舞い散る夜桜だけが、その光景を見守っていた。