いつかの火曜日(★)




 火曜日はスイバの家に行くことになっていた過去がある。
 これはその頃の思い出なんだ。ちょっと恥ずかしいんだけどね。


「うっン……あ……ああっ……んゥ……は」

 苦しいくらいに吐息が熱い。スイバの陰茎に貫かれて僕は俯いた。するとあごの下に手を置かれて上を向かされる。座っているスイバは、片手を僕の両腕の下に回して抱きしめるようにしてくれているんだけれど、それだけじゃ僕の体重は重力に従うから、深々と中にスイバを感じてしまうことになる。

「自分がどんな顔をしているのかわかっているのか?」

 羞恥から僕は目を伏せた。自分で自分の太ももを持っているんだけど、その手まで震えてしまった。不安定なこの体勢のせいで、さらに深く貫かれることになっているんだよね。
そして僕の真正面には、スイバが用意した大きな鏡がある。

「見てみろ」
「っ」
「なぁ、陛下? きちんとご覧下さい」
「ひッ」

 スイバに中を揺さぶられて、僕は思わず目を見開いた。そしてそこに映っている僕と、抱き抱えながら意地悪く笑っているスイバを見てしまった。スイバって本当にかっこいいんだよね……なんていう思考が、羞恥にかき消されたのは、耳元で囁かれた時なんだ。

「挿っているのが、はっきりと見えるな」

 結合部分を僕は鏡越しに直視してしまった。恥ずかしくなってもがきたくなったけれど、この体勢じゃどうにもならない。その言葉に思わず体に力を込めてしまった。だけどその結果スイバの陰茎を締め上げる形になってしまい、僕のほうが辛くなった。気持ちいい、けど、動いて欲しい。でも、そんな姿を鏡で見るのはやっぱり恥ずかしい。僕はどうしたらいいんだろう? 全然わからなかったんだよね。

「ひァ!!」

 両方の乳首をつままれたのはその時のことだった。触れられた箇所から、電流のように、全身に刺激が走る。

「あ、あ、あ」

 スイバの吐息が、何も衣をまとっていない僕の首筋にかかる。ゾクゾクして体の震えが止まらない。そのまま胸をこねくり回され、僕はきつくはをかんで、斜め下に顔を向けて再び目を伏せた。今度は恥ずかしいから目を閉じたわけじゃない。快楽がもたらすもどかしさに全身の力が抜けそうになったからだ。もう僕は、自分の両方の太ももを持っているなんて、とても出来そうにはなかった。だから乳頭をこすられ体の芯が疼いた直後、手を離してしまった。

「ふ、ぁ、あああっ、んン――!!」

 するとそれまでよりもさらに深くスイバの陰茎が入ってくる。力の抜けた体で、ただ繋がっている楔の存在感だけをはじめは意識した。しかしスイバが激しく突き上げ始めたのはその直後のことだった。

「うああああああ!!」

 限界まで体の熱がくすぶっていた僕は、その刺激に勢いよく精を放ったのだった。

 そのあとも何度もその体勢のまま突き上げられたのだけれど、僕はあんまりよく覚えていない。ただ気持ち良かったことだけは覚えているんだけどね!



 他には、こんな日もあった。

 その日は火曜日だから、頑張って仕事を早く終えた僕。

 胸がドキドキするというのは、まさにこれだ。そう思いながら執務室でそわそわしていると、スイバが入ってきた。

「陛下。悪いんだけどな、明日の会議の資料作りがあるから今日は無しだ」

 え。

 それが率直な心境だった。思わず息を飲みそうになったが、唾液を嚥下してこらえる。
だって、だってだ。思いっきり期待していたのがわかっちゃったら恥ずかしいではないか……! それにもうすぐサルビア王国との外交会議があることは僕も知っていた。スイバが忙しいのは仕方がないんだよね。だから。

「て、手伝うよ!」
「そうか。ありがたいな」

 スイバはそれだけ言うと、隣の宰相執務室に消えた。

 僕にだって少しくらいは出来ることがあるだろう。それに、例えスイバの家に行くことができなくたって、僕はもっとスイバの顔が見ていられたら満足だ。スイバの香水の匂いが部屋に漂うだけで、僕は幸せな気分になれる。

 それからスイバは、僕の前にごそっと書類の山を持ってきた。そして宰相執務室に引き返していった。……一緒に仕事はできなかったんだよね。結局顔も見られなかった。

 その日はちなみに、いつも夕方の六時には僕は仕事を終えるんだけれど、夜の十時半くらいまで仕事をすることになった。もうすぐ会議なのに、こんなに仕事が残ってるって大丈夫なのかな……? まぁ、スイバなら大丈夫だよね。そんなことを考えながら、終わった書類の山をどうしようか考える。スイバの顔が見たいし、自分で持っていってみようかな?

 そう思っていたら、ちょうど良くスイバが僕の執務室に入ってきた。

「終わったか?」
「うん」

 スイバには今日敬語を使う余裕がないみたいなんだよね。それもちょっとだけ心配なんだ。それから細部について少し話してから、僕は立ち上がった。

「それじゃあ僕は帰るね」

 多分スイバにはまだ仕事があるだろうから、邪魔をしちゃ悪いと思ったんだ。寂しいから構ってだなんて言っちゃいそうで怖かったのもある。もちろん小心者だから僕はそんなことを実際には言えないんだけどさ……。

 そして――扉に手をかけた時だった。背後に立ったスイバが、トンと扉に手をつき、鍵を閉めた。それから今度は両手を扉についた。挟まれる形になり、僕はドキリとした。心臓がうるさい。そうされるだけで顔があつくなっていく。

「スイバ……?」

 だけど、もしかしたらまだ仕事が残っているのかもしれない。手伝ったほうがいいのかなと思っていたら、不意に下衣をおろされた。そして。

「ひァ、あ、ああっ」

 唐突に陰茎を挿入された。最近毎週解されていた僕の体は、すぐにスイバのそれを受け入れた。緩慢に侵入してくる肉茎が、僕の中へと進んでくる。押し広げるようにされる感覚に思わず嬌声をあげた僕は、必死で扉に手を付いた。

「声を出すとリュークに聞かれるぞ?」
「!」

 ハッとして硬直仕掛けた時、腰を掴まれ、激しく一突きされた。

 こんなふうにされて、声を出すなっていう方が無理な注文だと思うんだよね。だけど、僕は異性愛者で通っているんだから、バレちゃったら困るのだ。

「っ……ふぁ……ぁァ……ン、ん、はっ」

 僕は必死で声をこらえた。なんとか口を閉ざそうとするのに、そうすると意地悪くスイバが中の感じる場所を突き上げてくる。そこをされると頭が真っ白になって、体の力が抜けてしまうのに。立っているのが辛くなってくる。手も足もすぐに震え始めた。その時耳元で囁かれた。

「ダラダラだな」

 そういったスイバが、片手で僕の陰茎を掴んだ。指先で、クチュクチュと先端を嬲られ、僕がこぼしている先走りの液が音を立てる。

「ああっ……あ、ふぁぁ……」

 ついに快楽の悲鳴をこらえきれなくなった時、上着に手をかけられた。どうしよう。服を脱がされていく僕は、今誰かが来たらと思うと怖くなった。いくら鍵が掛かっていたって、合鍵が存在するんだよね。するとスイバが何処に持っていたのか、香油の瓶を取り出した。もうなかには入っているのに、何に使うんだろう。そんな思いと同時に、その瓶の色に、今度は本当に息を飲んだ。それは、セレナ殿下が置いていった媚薬だったからだ。両手の指先に少しだけそれを垂らしたスイバは――その状態で僕の乳首をつまんだ。

「あ、あ……あア――!!」

 全身が熱くなったのはすぐだ。気が狂いそうなほどの快楽が押し寄せてくる。胸の飾りが、体中で最も感じる場所になってしまったかのようで、わけがわからなくなって、僕は泣いた。ただでさえスイバの端正な指先の動きだけでも気持ちがいいのに、ジンジンと暑いのだ。僕にはもう声をこらえるという概念がなくなってしまった。

「は、あ、ああああ!! や、やだァ、ああああ!! ンあ――!!」

 ぬるぬるとする指先で、優しく乳頭をつつくようにされただけで、僕は放ってしまった。全身の力が完全に抜け、僕はスイバに抱きとめられるようにしながら床に座り込んだ。一度陰茎を脱いだスイバが僕の体を反転させる。そして僕の左の太ももを持ち上げると、再度貫いた。

「ああア――!! あ――!! あ、あ、ああああ!!」

 そうしながら、まだ媚薬に濡れている指を二本、声を上げた僕の口の中に入れてきた。そして僕の下をなぶる。甘いその味に、体がもっと熱くなった。意識に霞がかかりはじめる。ゾクリと悦楽が背筋を這い上がり、息が上がった。舌を弄られるのも、どうしようもなく気持ちが良かった。だけど指を引き抜かれ、激しく突き上げられた時、僕は懇願した。

「も、もう、できなっ、うあ――!!」

 しかしスイバは止まってくれなかった……。それからなかに熱い飛沫を感じるまでの間、何度か角度を変えながら、僕は中を暴かれ続けたのだった。そして僕は意識を飛ばしてしまったらしかった。

 気が付くと、僕はきちんと服を着ていて、ソファに座らせられていた。媚薬の熱はなんとか去っていた。その事実に安堵したとき、すぐそばに立っていたスイバが、僕の頬に触れた。

「悪い、思ったよりも余裕がなかった」

 僕は、そんな言葉が少し嬉しかったんだったりする。